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福岡アジア美術館主催のアーティスト・イン・レジデンス成果展 Artist Cafe Fukuokaで12/22まで

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アルトネ編集部
2024/12/20
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 福岡アジア美術館開館当時より実施しているアーティスト・イン・レジデンス。現在、第23回目となる本事業の成果展「周縁からはじまる」が、Artist Cafe Fukuokaで開催されています(12月22日まで)。
 展示されているのは、杉原信幸さん×中村綾花さん(長野)ブルーノ・ルイスさん(メキシコ)、上村卓大さん(福岡)、浦川大志さん(福岡)の4組のアーティストの作品。展覧会初日に開催された作家本人のことばとともに、その様子をほんの少しレポートします。

 1組目は、「信濃の国 原始感覚美術展」を2010年より主催するなど、長野を拠点に活動する美術ユニット、杉原信幸さん×中村綾花さんのインスタレーション作品。  

(左)《海の中道の磯良》(部分)杉原信幸×中村綾花

  古事記にも記される長野の海の民・安曇族の存在に着目しながら、志賀島や豊前、 対馬等、さまざまな土地をリサーチ。人びとやその土地に宿るものとの出会いを重ね、その断片や記憶をたぐりよせるように、貝殻と海綿をつなぎあわせた船のインスタレーションを展開しています。
 「さまざまな土地を訪れ、人々から話を聞きました。古代の記憶や神話、そして今の出会いといったそれぞれの‟かけら“が積み重なり、符号していくような体験があり生まれた作品です。」(杉原さん)
 「自分たちがつくり上げたというよりも、自然からいただいたものを通して作品が出来ていったという印象があります。これまでは材料に化学的な素材を使うこともあったのですが、今回は、天然素材のにかわを接着剤に使用しました。苦労もしましたが、やわらかいやさしいかたちになったと思います。」(中村さん)

 今回、唯一の海外からの参加となったブルーノ・ルイス(メキシコ)さんは、「ガリ版」印刷の起源と用途について、リサーチや実践を展開。会場中央には、労働運動や社会運動の一端を担ったガリ版による印刷物の数々が展示、九州だけでなく、アジア諸国の印刷物が並びます。元学校という場を活かし、黒板には、ガリ版の歴史にまつわるドローイングや、リサーチを取りまとめた映像作品、その他にも、福岡のアーティストや子どもたちと行ったワークショップの作品も紹介されています。

《ガリ版オタクの会》(部分)ブルーノ・ルイス

 これまでもアートグループを結成し、集団による活動を行いながら、自費出版や公共の場における美術の自立性とは何かを問う活動を行ってきたルイスさん。日本においても近代化を下支えしてきたガリ版の歴史を浮き彫りにすると同時に、福岡在住もガリ版アーティストともコラボレーション、協働による表現活動の可能性やその未来の一端を垣間見せてくれました。
「シンプルな構造で持ち運びができるガリ版は、誰とでもコラボレーションし、表現の場をつくることができるメディアです。今回のリサーチでは、日本において、いかにガリ版が社会運動や労働といった場面で、市民の声を代弁し、表現してきたのかということがわかりました。」
「私が作品づくりをする上で、‟いかにコミュニティやネットワークをつくるか”ということもも重要なポイントのひとつです。今回、福岡のアーティストと協働したことも大切な成果のひとつでした」(ルイスさん)。
 オープニングでは、過去のレジデンス作家で、屋台研究家・アーティストの下寺孝典さんとルイスさんのコレボレートした屋台が出現、ルイス氏の母国メキシコのソウルフードが振舞われました。

 次は、福岡在住の彫刻家、上村卓大さんによる《「0927535225」もしくは「スカスカのオブジェ」》。

《「0927535225」もしくは「スカスカのオブジェ」》(部分)上村卓大

 タイトルある10ケタの数字は、上村さんがこの展示の場所を与えられた後、NTT西日本との契約によって付与された電話番号(ちなみに敷設工事は展示期間中とのこと)。
「すでにフラットにそこにあるもの――電気や水といったインフラやにも注目し、そのつながりや変換や循環ということを、実際に目で見て、たどっていけるようになっています。」
 会場天井に開けられた孔からは電気工事の線がのぞいています。その下に置かれたFAX、その隣に置かれた両替機、もう一方には、洗濯機が設置されホースを通して水の循環が表されているのだそう。
 「たとえばこの両替機。‟我、両替機也“然とした見た目、その物体自体が‟彫刻”だ!とも思えるのですが、例えばお札を(両替機という物体に)入れることで、小銭がジャラジャラと出てくる。軽い1枚が重い複数のものに変換される。」「(作品をつくる上で)‟たまたま“ということも大切にしています。」(上村)。
 ‟日常にひっそりとそこにあるもの“を彫刻とすることで、場における美術やアーティストの意味を問い直す試み――疑うことからはじめてみる仕掛けの数々をユーモラスに話してくださいました。

 4人目は体育館の大きな空間を使用し、巨大な絵画作品を手掛けた浦川大志氏。 

《オープンパノラマ:蓑虫のためのスケッチ、あるいは焼けた壁についての個人的なカーテン》
浦川大志

 現代の風景画(遠近法)をテーマに、グラデーションの線やインターネット上に存在する画像などをモチーフに組み合わせた絵画作品を制作してきた浦川氏が、今プロジェクトとして題材にしたモチーフは「博多べい」。豊臣秀吉が戦災等で荒廃した博多の街を復興するために建設した「博多べい」は、焼け瓦や焼け石等が組み込まれた、断片的なものの集合体であったそう。
 「インターネットのデータや画像を組み合わせて作品づくりをしている自分としては、博多べいの断片的な要素、バラック的ともいえる要素に興味惹かれました。福岡は、今も昔もアジアとの交流の窓口と言われていますが、その壁が思想的にも境界線としても軽やかに区切るものとしてあってもいいのではないかという想いから、この形状の絵画展示となりました」。
 体育館を縦断する大画面は、天井から床に吊られた12本の布のロールが連なったもの。デジタル的な筆致、コラージュされた布、蓑虫の形象‥‥浦川さんの作品に特徴的なグラデーションや走る描線とともに、様々なモチーフやかたちがカラフルに展開する迫力のある作品です。

 4人の成果展は、12月22日(日)まで。最終日には、杉原信幸×中村綾花のパフォーマンス&トークイベントも開催されます。2024年、それぞれのアーティストが福岡の地で考え、かたちにした作品群をぜひご覧ください。

第23回 アーティスト・イン・レジデンスの成果展
周縁から始まる
 

日程       2024/12/14(土) 〜 2024/12/22(日)
時間       11:00 〜 17:00 
休館日    12月16日(月)休館
会場       Artist Cafe Fukuoka(福岡市中央区城内2-5)
料金       無料
主催       福岡アジア美術館
URL       https://faam.city.fukuoka.lg.jp/exhibition/22409/
問い合わせ先       092-263-1100

 

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