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体験して感じる創造の楽しさ。「ひびのこづえ展『みる・きる・つくる』」【レポート】

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木下貴子
2019/08/15
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演劇、ダンス、バレエ、テレビ番組、広告など、多岐にわたって活躍するコスチューム・アーティスト、ひびのこづえによる展覧会が、三菱地所アルティアムにて開催中だ(8月25日(日)まで)。展示に体験が加わり、エンタメ的にも楽しめる本展の魅力をお届けする。


誰もが知るルイス・キャロルの小説『不思議の国のアリス』。これまで無数に書籍化され、ディズニー映画をはじめキャラクター商品などヴィジュアル化もさんざんされている。そのほとんどが初版本をベースにしているためか、『不思議の国のアリス』のイメージは割とみんなのなかで統一化されているのではないだろうか。が、しかし! そのイメージを大きく変えてはいないのに、こんなアリスの世界観もあるのか……と思わされるのが、本展最初の部屋に展示される「ダンス『不思議の国のアリス』KAAT 2017, 2018」の衣装である。

「ダンス『不思議の国のアリス』KAAT 2017, 2018」展示風景


ひびのさんも初版本の挿絵をイメージのベースにされてあるが、そこに自身の新しい解釈や、ダンサーをより魅力的に見せるというような視点が加味されているのがポイントだ。たとえば中央に展示される「ハートの女王」の衣装などは、ダンサーが着るにはありえない大きさだ。ひびのさん曰く、「女王の傲慢さをただのドレスでない形で表したかった」そうだ。実際の舞台上ではダンサーの動きによって、スカートの部分が浮きあがり自由になびくという。会場ではダンス公演のトレーラー映像も上映されているので、あわせて見てみよう。

『不思議の国のアリス』に登場する、チェシャ猫の衣装


印象がガラっと変わる次の部屋には、「NODA・MAP」率いる野田秀樹さん演出の舞台衣装がずらりと並ぶ。1990年の『から騒ぎ』以来、野田さんの舞台衣装をこれまで30本以上作ってきたというひびのさん。過去に使用されたそれらの舞台衣装の一部が展示されている。

「野田秀樹さん演出 舞台衣装」展示風景

 

非日常である舞台では「服」は「衣装」となり、デザインの独自性が求められるだろう。それに応えてきた、ひびのさんの歴史がここに見られる。衣装一つひとつのデザインを俯瞰して楽しめるのはもちろんのこと、近寄ると、激しい動きの舞台で何度も着られた衣装のほころびと繕いの痕跡をも見ることができる。舞台衣装は「みられる」ものであると同時に「きられる」もの。当然の事実なのだが、人が着る事を前提に作られたもというのが、通常のアート展示とはまた違う面白さだ。

左のコートのベルト部分などは、だいぶ繕われているのがわかる


舞台衣装を使ったフォトスポットもあり、実際に着られはしないけど、紙の着せ替え人形のように、衣装の後ろ側に回って記念写真を撮ることができる。

次の体験ができる部屋では、天井から吊られたバルーンドレスや、壁に飾られるヘッドピースを試着することができる。

バルーンドレスは子どもから大人まで試着可能。子どもが着るとこんな感じ

 

「ちいさな生きもの研究所」として毎月4回のワークショップを行っているひびのさん。この部屋にもミニワークショップコーナーが作られている。あらかじめ用意されている端切れや糸を使って、世界で一つだけのオリジナルブローチ作りに挑戦しよう!

ひびのさんの衣装の端切れが素材と、けっこう贅沢。いろいろな布があるので、アイデアもたくさん膨らみそう


最後の部屋「世界に一つのもの」では、ひびのさんが衣装を作る時に残った端切れや、衣装だったものを解体したものから生まれたバッグや服が、まるで森のように展示されている。衣装のデザインは材料から発想することもあるそうだが、これらバッグや服は手元にある素材を見ながら材料を買い足さずに作っていくという。だから一つとして同じものはなく、また、同じものは2度と作れないものなのである。

「世界に一つのもの」展示風景


ここに展示されているバッグや服は、なんと販売もされている! 購入されるとその分補充されていく仕組みの一期一会の展示。買いたいものがあれば、即決がおすすめだ。

購入できるとなると、また見方が変わってくる。自分に合うものはどれだろう、どうやって使おう……など自分視点での思考が強くなる


「みる」経験に、「きる」体験を加えることで、特別なものがぐっと身近に感じられるようになる。さらに「つくる」行為を通して、自分にはできないと思いこんでいたデザインや制作が、誰にでもできるという事に気づく。楽しく見せながら、アートに対する固定概念をやわらげ、誰しもに創造力があることをやんわりと感じさせてくれるひびのさんの手腕は、さすがと言わざるをえない。会期は残りわずか、お見逃しないように。

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