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ヤノベケンジが博多に作った「スペース招き猫」がすごい!【レポート】

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木下貴子
2017/07/07
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ヤノベケンジ氏のパブリックアート作品が博多に出現するらしい……という噂が流れ、アートファンの間でざわめきが起こったのは梅雨入り前のことだった。ヤノベ氏といえば、国際的に活躍する日本を代表する現代美術作家の一人だ。「あいちトリエンナーレ2013」「瀬戸内国際芸術祭2013」などに出品された巨大な立体作品は、高い注目を集めただけでなく、瀬戸内国際芸術祭に至っては地域の有志の人々によって作品周辺に祠が建てられたという逸話もある。それほど人を引きつける実力と魅力を備えたアーティストなのである。

果たしてどんな作品で、そしてどこで見ることができるのか。すでにテレビや新聞、SNSなどでご存知の方も多いだろうが、改めてARTNEにて紹介させていただこう。

作品の設置場所は、2017年7月14日に福岡市博多区店屋町にオープンするコミュニティ型ホステル「WeBase 博多」だ。6月20日に除幕式が開かれ、ヤノベ氏ご本人ほか福岡市長の高島宗一郎氏らが列席した。多くの報道陣が囲むなか現れたるや……なんと高さ約3メートルの巨大猫。その名も『SHIP’S CAT』!

除幕式の様子。左からヤノベケンジ氏、高島宗一郎福岡市長、
「WeBase 博多」を運営する株式会社レーサムの田中剛代表。
するするっと幕が引かれ……
ジャジャーン!『SHIP’S CAT』のお目見え。
作者であるヤノベ氏はもちろんのこと、高島市長にも満面の笑みが見られます。

巨大なだけでなく、その姿や表情もすごいインパクト。この除幕式の後を境にSNSではこの『SHIP’S CAT』の写真が続々と拡散される様子も見られるが、その気持ちはよくわかる。見過ごせないし、人に教えたくなる。

そして、多くの人が疑問にもつだろう。なぜ猫なのか……?

話は大航海時代まで遡る。当時、長い航海をする船には猫が乗船し、ネズミを獲ることで貨物や食糧、船を守り、疫病を防ぎ、時に船員の心を癒す友として世界中を旅してきた。日本最古の港湾都市・博多に相応しいシンボルとして、そして、世界中の旅人をサポートするホステル「WeBase 博多」にふさわしいモニュメントとして、「旅の守り神」でもあるこの猫をモチーフに『SHIP'S CAT』が制作されたという。

「WeBase 博多」は164のベッド数をもつ、九州最大のホステルとなる。「九州最大のホステルになるのだから、最大のネコを持ってこようと思いました」とヤノベ氏。当初は大人の人間ほどの大きさだったものが、後に巨大なオブジェに変わっていったことがイメージ図からもうかがえる。

ホステルのロビーに展示されている『SHIP’S CAT』のイメージ図。
ヤノベ氏のドローイング作品が見られる機会は希少なので、ぜひこちらもチェック!

『SHIP’S CAT』が生まれたのは、「WeBase 博多」を運営する株式会社レーサムと京都造形芸術大学との産学連携プロジェクトがきっかけ。ヤノベ氏は同大学の学生がトップクリエイターとともに作品をつくる「ウルトラファクトリー」のディレクターでもあるのだ。はるばる京都から、「お嫁に行かせるような気持で、博多に送りこみました」とヤノベ氏。「生みの親は僕ですが、これからは博多の人たちが育ての親。どのように成長するかは分かりませんが、僕の想像ではロケットに乗って宇宙まで行く……。それぐらいダイナミックな成長を願っています」と話す。『SHIP’S CAT』のステンレスで作られた宇宙服や鎧のような造詣には、宇宙を航海する未来の希望も込められている。

ホステルの外側からも見られるが、ロビー内ではそのぷりんとおしりが上がったキュートな後ろ姿までも見られるほか、先に紹介したヤノベ氏の貴重なドローイング作品も展示されているので、ホステルスタッフに一言声をかけて1階ロビーを見せてもらおう。なお、館内のサインは、ヤノベ氏監修のもと京都造形芸術大学の学生と産学連携で取り組み作成されたもので、それらを見ることができるのは宿泊客だけの特権。とはいえ1泊の料金は3000円からということなので、このお値段だったらプチアート旅行的に宿泊体験してみるのも一興だ。

ロビー内から見た背面。こんなに近づいてヤノベ氏の作品を見ることができるのは、パブリックアートならでは。
『SHIP’S CAT』の旅の歴史を描いたドローイング作品もロビー内で見ることができる。
こちらは、男性用シャワールームの暖簾。

未来ある若者の旅を後押しするための「出発」「希望」「誕生」といった意味が込められた『SHIP'S CAT』。博多の新名所になりそうだ。 

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