九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  連載記事 ›  【連載】山出淳也 アート、まちに出る 14

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 14

Thumb micro 6f691dcb2f
山出淳也
2021/01/21
LINE はてなブックマーク facebook Twitter


Nowhere

 20歳でロンドンに旅立ち、1年ほど遊学を続けた。その目的の一つは、アニッシュ・カプーアという現代アートの巨匠に会いたかったからである。

 1990年代初めに出版された美術雑誌の特集で、彼を知った。その中に出てくる作品は、10代後半の僕には見たことがないものだった。彼のアトリエも掲載されていた。田舎育ちの僕はロンドンに行けば彼に会える、この写真を頼りに探してみよう。そう考えた。

 現地で「A to Z」という地図を買った。テムズ川の南側だと大体のあたりをつけ、地図に描かれている路地という路地を歩いた。歩けばそこを赤く塗った。全ての道が赤で染まったが、見つけることはできなかった。彼のアトリエはどこにもなかった。

 帰国して数年たった頃のこと。ある先輩とお茶を飲んでいた。その方から「大分にいちゃ誰も見てくれない。東京に行きアート界に属さなきゃダメよ」と諭された。親切心からの言葉だったが無性に腹が立った。「アート界なんてどこにあるんですか? 自分の仕事は良い作品を作ることのみだ」。そううそぶいた。

 別府市で活動を始めようとしていた2005年。中心街を歩いて驚いた。そのあちこちがシャッターで閉ざされ、日中歩く人もまばら。子どもの頃憧れた、ワクワクするあの風景が消えて無くなったと思った。ある方から「アートするんだったら、なぜ別府? 由布院や黒川とか、九州内で元気な温泉地は他にもあるじゃないか」と助言を受けた。

 他の町では意味がない、そう思った。と同時に、別府に行けばなんとかなるかもしれないと、他の誰かの力を当てにしていた僕の甘さを恨んだ。一生懸命、数年先まで計画を練った。傑作だと思ったそれは、なんのことはない。どこかで見た企画そのまま。この町でなければならない理由なんてなかった。

 「Nowhere(どこにもない)」という単語が好きだ。分解したらNowとHere。つまり、今・ここ。足元を、目の前の風景をきちんと見よう。まずはそれからだ。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(11月20日付西日本新聞朝刊に掲載)=

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 0b28d371d8

松浦史料博物館開館70周年記念・九州国立博物館開館20周年記念特別展
平戸モノ語り ─松浦静山と熈の情熱

2026/01/20(火) 〜 2026/03/15(日)
九州国立博物館

Thumb mini 9a697c3afa

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト

2025/12/13(土) 〜 2026/03/08(日)
福岡市美術館

Thumb mini 57935b3824

企画展「浦川大志個展 スプリット・アイランド」 作家によるギャラリートーク

2026/02/07(土)
福岡市美術館 2階 近現代美術室B 企画展「浦川大志個展 スプリット・アイランド」展示室内

Thumb mini d88abbac2c
終了間近

創刊50周年記念
花とゆめ展 in 熊本

2025/12/06(土) 〜 2026/02/08(日)
熊本県立美術館

Thumb mini 16fffe5451
終了間近

「木梨憲武展-TOUCH」
SERENDIPITY-意味ある偶然

2025/12/20(土) 〜 2026/02/08(日)
佐賀県立美術館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 491061d417
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 13

Thumb mini da978e5405
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 12

Thumb mini 67b1983f47
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 11

Thumb mini 34d2f10e92
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 10

Thumb mini 8310e24943
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 9

特集記事をもっと見る