日中文化交流協定締結40周年記念
特別展「三国志」
2019/10/01(火) 〜 2020/01/05(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
2019/11/29 |
来年1月5日(日)まで、福岡県太宰府市で開催中の特別展「三国志」。小説や漫画、ゲームなどにもなった「三国志」の世界は、時代を超えて多くの人に親しまれてきた。立命館アジア太平洋大(APU、大分県別府市)学長で、ライフネット生命創業者の出口治明さんもファンの一人。歴史好きで知られ、歴史関係の著作も多い出口さんに三国志の魅力、展覧会の見どころなどを聞いた。
諸葛孔明は大軍師、知謀の徒と言われている。「矢を調達しろ」と命じられたら、船に矢を射させて集める。「赤壁の戦い」(208年)では火攻めにして軍事力に勝る曹操軍を破る。そんなすばらしい逸話が語り継がれてきた。
ただ、その物語の多くは明代の「三国志演義」での話であることを留意すべきだ。劉備から「三顧の礼」で迎えられた場面を描く展示品「孔明出山図」も明代の作品である。孔明が生きた時代の話を千年以上たってどこまで正確に描けているかは分からない。
実は孔明にはモデルがいると言われている。明の太祖、朱元璋の軍師劉基である。元の末期、朱元璋のほかに陳友諒、張士誠が鼎立していた。当初朱は、東の張を討つつもりだったが、劉基の意見に従い西の陳を攻めた(1363年、鄱陽湖の戦い)。その戦いでは劉基のアドバイスにより巨艦を持つ陳軍を火攻めで破っている。三国志演義が書かれた時には、戦いの様子を見聞きした人もいたはず。孫権(そんけん)、劉備の連合軍が南進する曹操を破った「赤壁の戦い」は、鄱陽湖の戦いをモデルにしている。
孔明は中国を統一することを使命とし、北伐を繰り返した。ただ現実的には蜀は魏に比べると小国で勝てる可能性は低い。その裏にある思いを推し量ると「現世での勝利は諦め、歴史に名を刻もう」と考えたのではないか。上奏文「出師の表」は名文の誉れが高い。忠義を示し続けた武将として後世に名を残せる。そういうインセンティブが働いたのかもしれない。
ちなみに孔明の兄、諸葛瑾は孫権に、いとこの諸葛誕は曹操に仕えている。そのさまは徳川、豊臣家に仕えた真田家をほうふつとさせる。誰が勝っても一族は残る。乱世にあっては当然のリスク管理だと思う。 =11月19日西日本新聞朝刊に掲載=
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