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わけあって県外にありますが・・・「福岡の至宝」の里帰り展 九州歴史資料館

2020/10/28 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 展示会場の起点には木箱に入った三角縁神獣鏡3枚が並んでいた。福岡県糸島市の一貴山銚子塚古墳で発掘された逸品だが、その所蔵は地元ではなく、京都大総合博物館という。

 九州歴史資料館(九歴、同県小郡市)で特別展「福岡の至宝に見る信仰と美」が開かれている。同県太宰府市からの移転開館10年を記念した企画では、あえて「福岡県内ゆかりの、県外にある文化財」を集めた。並ぶのは国宝6件を含む約90件の里帰り品である。

 神獣鏡が出た銚子塚古墳は玄界灘沿岸で最大規模の前方後円墳。1950年の発掘調査では、被葬者の両脇に三角縁神獣鏡8枚が置かれた状態で出土した。発掘を担当した考古学者、小林行雄(1911~89)はその後、同じ鋳型で作られた鏡が同盟の印として畿内から各地の豪族に広まったとする「同笵(どうはん)鏡理論」を展開させ、古鏡研究の権威となる。その意味でも貴重な鏡がなぜ京大に? 九歴の遠藤啓介学芸員は、小林が京大に所属していたからと推測する。

紅葉ケ丘遺跡から出土した27本の銅戈

 3枚の鏡の隣には、紅葉ケ丘遺跡(弥生時代後期、春日市)の銅戈27本が展示されている。儀式で使用したとみられ、当時の一括埋納の事例としても価値が高い。銅戈のうち25本は、67年の宅地造成工事の際に偶然発見され、なぜか京都国立博物館が蔵すことになった。「文化財行政の未整備、保管の問題などが原因でしょう」と遠藤学芸員。昭和の終わり頃までは、地方に受け皿も少なく、発掘文化財が地元を離れるケースが見られたという。

 一方、文書や美術品については古里を離れた理由はさまざまだ。東京芸術大から借りた国宝「観世音寺資材帳」(905年)は中央に報告する観世音寺(太宰府市)の財産目録で、1120年に同寺が東大寺の末寺になるのに合わせて東大寺に移管された。明治期までは東大寺が所持していたが流出。その後、個人蔵となり、大正期に東京芸大が買い取ったという。

9枚の金銅板をつないだ「金銅板両界曼荼羅」

 重要文化財「金銅板両界曼荼羅(まんだら)」は、金銅板9枚がちょうつがいなどでつながれ、折りたためる。12世紀末の品で、清楽寺(柳川市)に奉納されたが、携帯可能な折りたたみ式ゆえか、江戸時代までには茨城県の寺に移ったとみられている。井形進学芸員(仏教美術)によると、清楽寺近辺は今でこそのどかな場所だが、「この曼荼羅を見れば、かつて水準の高い文化基盤を持っていたことが分かる」。里帰りした文化財は、華やかなりし古里の姿も想起させるのだ。

 改正文化財保護法が施行されるなど近年、文化財の活用が叫ばれている。本展の充実も、2018年に発足した「国立文化財活用センター」の文化財貸与活用事業に選定されたことが大きい。今後は福岡に限らず各地の文化財の「往来」が活発になるだろう。里帰り品が地元の新たな側面に光を当てることを期待したい。(小川祥平)

=(10月26日付西日本新聞朝刊に掲載)=



特別展「福岡の至宝に見る信仰と美」
会期:2020年10月6日(火)~11月29日(日)
   午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで)
   ※月曜休館(ただし祝日・振替休日の場合はその翌日)
会場:九州歴史資料館(福岡県小郡市三沢5208-3)

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