九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  コラム ›  写実絵画はなぜ人々を魅了するのか/ホキ美術館名品展/鹿児島市立美術館で5月6日まで

写実絵画はなぜ人々を魅了するのか/ホキ美術館名品展/鹿児島市立美術館で5月6日まで

Thumb micro 6e69b4f50a
アルトネ編集部
2018/04/27
LINE はてなブックマーク facebook Twitter
島村信之 《幻想ロブスター》2013年

 写実絵画が人気だ。書店の美術書コーナーには特集雑誌が並び、美術市場では作品の売れ行きも好調という。2010年に開館した写実絵画専門のホキ美術館(千葉市)も人気を後押しする。何が人々を魅了するのか。鹿児島市立美術館で開催中の「ホキ美術館名品展」で考えた。
 まるで写真だ。島村信之の「幻想ロブスター」は、甲殻類の複雑な形をした口、ハサミの小さな爪まで精密に描かれている。黒い床に反射した手足がリアリティーを際立たせる。だが近づいて見ると、筆の跡が分かり、絵であると実感する。来場者もあちこちで作品を凝視していた。
 色彩も豊かだ。写実絵画に詳しい安田茂美・東京芸術大客員教授によると、映像は3色、印刷物は4色の組み合わせで色を再現するのに対し、絵画はたくさんの絵の具を混ぜる。特に油彩は薄く描くと半透明になり、「何層も重ねて描くことで発色が自然に近くなる」と安田さんは語る。
 

生島浩 《5:55》2007-2010年


 生島浩が足かけ4年を費やした「5:55」から色彩の深みが見て取れる。薄暗い部屋で、青い服を着た女性が椅子に座っている。彼女の右側から淡い光が差し込み、右肩は白っぽい。左側の影になるにつれて色がくすんでいく。こうした光の表現は、17世紀のフェルメールにも通じる。
 本展は画家26人の62作品を並べ、それぞれの技術や個性の違いを浮かび上がらせる。森本草介は独特なセピア色の作品で知られ、代表作「光の方へ」で裸婦の後ろ姿を描いた。絹のような髪の毛、柔らかな尻を繊細に描き、セピア色の世界が女性の柔和な雰囲気を引き立てる。床と壁の境界をあえて描かず、構図と色の濃淡だけで空間の奥行きを表現したのも興味深い。
 19世紀に写真が登場し、画家の立場が変わった。職を失い、写真技師に転じた肖像画家もいたという。目の前の事象を正確に記録する写真に対し、画家は何を描くのか。抽象表現もその答えの一つだった。

森本 草介 《光りの方へ》2004年


 「写真は一瞬を切り取るが、絵画は画家が時間をかけて技術を埋め込み、理想像を表現するもの」と安田さん。絵画として成立させるため、現実とは違う部分が絵の中に存在することもある。誰もが気軽にデジカメで撮影できる今だからこそ、研ぎ澄まされた人間の技術力と想像力を体感できる写実絵画に、人々は魅了されるのだろう。 (野村大輔)=4月23日西日本新聞朝刊に連載=

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini c2459b66e6
終了間近

この場所の終わり 内海昭子

2026/03/05(木) 〜 2026/03/27(金)
EUREKA エウレカ

Thumb mini 0cfc4f9f71
終了間近

Fire in Water
城一裕 + 永田康祐

2026/03/13(金) 〜 2026/03/27(金)
大橋キャンパス 芸術工学図書館 映像音響ラウンジ

Thumb mini 0060bde88c
終了間近

児玉和也写真展 嵯峨島

2026/03/05(木) 〜 2026/03/28(土)
dongbaek

Thumb mini 6f7f43f9c0

第4回福岡アートアワード受賞作家 ギャラリートーク

2026/03/28(土)
福岡市美術館 2階 コレクション展示室 近現代美術室B

Thumb mini c31b39ea15
終了間近

2025年度常設展示
極彩色の立石大河亞

2025/04/01(火) 〜 2026/03/29(日)
田川市美術館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini abcd1a6443
コラム

【コラム】福岡のくらしと自然 今昔 特別展「魔法の歴史スコープ」<中>製鉄で進む森林伐採

Thumb mini 72c0ea6456
コラム

【コラム】九州派受け継ぐ 現代の「風景画」 個展「スプリット・アイランド」を開催 画家 浦川大志さん

Thumb mini a967c161f8
コラム

【コラム】特別展「平戸モノ語り」 15日まで九州国立博物館 殿様の信念 3万件 漢籍、洋書、鉱物、絵巻、武具、茶道具… 全容把握へ調査続行

Thumb mini 546eacb3bc
コラム

【コラム】福岡のくらしと自然 今昔 特別展「魔法の歴史スコープ」<上>ドングリから稲作へ

Thumb mini 6adb782924
コラム

福岡県立美術館「みんなの画材」から見えてきたこと(寄稿:福岡市美術館学芸員 忠あゆみ)

特集記事をもっと見る