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福岡市美「梅田哲也 うたの起源」1/13まで 見えない音への想像刺激【コラム】

2020/01/09 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 

壺やバケツを使ったインスタレーション「うたの起源」

 スピーカーから音楽が流れ、人が声を発する。仕組みを明解に説明できる人はよほどの専門家だろう。日常的な現象は、実は途方もないメカニズムの上に成立した奇跡かもしれない。
  国際的評価も高いアーティスト梅田哲也の展覧会「うたの起源」は、普段私たちには姿の見えない音への想像力を刺激する。福岡市美術館の各所に7点、廃材や日用品を使い、光、音を組み合わせたインスタレーションを展示中だ。
  展覧会と同名の作品。耳を澄ませば「ポトリ」「カチャリ」とかすかな音。目を凝らすと天井から落ちる水滴は、水で満たされた壺へ。ぶらさがった鎖はゆっくりと上下し、床に置かれた金属バケツに触れる。電気信号などで制御された難解な装置が音を作り出す。音の出る複雑なプロセスをデフォルメしたのか。
  昨年リニューアルした同館にとって、梅田の展覧会はこれまでにない館のあり方を打ち出す挑戦だ。一例は、湿度が作品保存に影響するため、美術館と相性が悪い水の使用だ。既存のルールや構造にまで介入しようとする梅田との間で、せめぎあいが続いたという。
  鑑賞者に見せることはない展示室内の倉庫スペースも作品化。電球が断続的に照らすのは無機質な備品だ。夜間だけ、館外から窓越しに鑑賞する作品もあり、通常見ることのない角度から美術館と接することになる。可視化されるのは音だけではないのだ。
  どこまでが作品か分からず、物静かな展示スタッフに話しかけたくもなる。鑑賞がコミュニケーションの引き金となることさえも、美術館の新たな意味を引き出そうとする作者のたくらみなのかもしれない。 (諏訪部真)=1月6日付西日本新聞朝刊に掲載=

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