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ヨシタケシンスケさんに聞く 例のない展覧会かもしれない 見どころは他のお客さん 福岡市科学館で初の大規模個展【インタビュー】

2023/06/12 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 人気絵本作家、ヨシタケシンスケさんの初の大規模個展「ヨシタケシンスケ展かもしれない」(西日本新聞社など主催)が、福岡市中央区の市科学館で開かれている。ユーモラスだけど、どこかシュールなキャラクターたちが絵本から飛び出して、斬新な物の見方や考え方をつぶやいたり、日常の不安や悩みを語りかけたりする独自の世界に注目が集まっている。会場を訪れたヨシタケさんに展覧会に込めた思いや、来場者に伝えたいメッセージなどを聞いた。 
                   (聞き手・塩田芳久 写真・石田禎裕)

 ―本展のタイトルを「ヨシタケシンスケ展」だけにせず、「かもしれない」を付け加えた理由は?
 「デビュー作『りんごかもしれない』にちなみましたが、当時から一貫してやってきたのは、いろんな価値観を提案すること。あることは実はこうかもしれないし、こういう言い方もできるかもしれない、答えは一つじゃないと言ってきました。だから本展も『展覧会とはこういうものだ』と決め付けず、『今までにない展覧会かもしれない』と楽しんでほしいですね」

 ―苦心した点は?
 「普通、絵本作家の展覧会は原画展で、大きな原画で微妙な色使いや質感を見るために会場を訪れます。だけど僕の原画は絵本より小さくて、色も付いていない。原画だけ飾ると会場がもちません。だから、ここでしかできない経験を提供できる会場にすることに努めました」

【原画かもしれない】絵本より小さく色も付いていないが、細かく描き込まれている

 ―「顔はめ」など、子どもたちが楽しめるコーナーがたくさんある。
 「子どもの頃、親と展覧会に行き、絵ばかり並んでいてつまらない思いをしました。そうなると親も子も楽しめない。親が絵を見ている間に、子どもたちが遊べるスペースがあれば、昔の僕も退屈しないだろうと考えました。一方で子ども向けの展示は卒業したと思っている大人が、よくよく考えると深いテーマだなと思える展示もあります」

 ―壁面いっぱいに展示した絵本の「発想の源」、アイデアスケッチが圧巻だ。
 「記録しておかないと忘れちゃうくらいどうでもいいことに興味があるんです。何の得にもならないけど、確実に存在するものを記録したいと思い、アイデアスケッチを残してます。外付けのハードディスクに保存する感覚ですね」

【宝庫かもしれない】約2千点のアイデアスケッチはヨシタケさんの「発想の源」。
絵本の原点が詰まっている

 ―趣味で集めた私物のコレクションもある。
 「コレクションをすることは自分や世界を知ることにつながります。コレクションを面白がれば楽しみが増えるし、僕自身そんな楽しみを見つけるのが好きです。みんなコレクションをしませんか、という提案になっています。世の中ですごくきらめきながらも、消えてしまうものはたくさんあるよね、という思いも共有したいです」

【新作かもしれない】ヨシタケさんが今回福岡を訪れて描いたアイデアスケッチ。
新作は日々生まれている

 ―会場で見逃してはならないものは?
 「会場内に告知してますが、一番の見どころは他のお客さんなのです。自分と同じように、絵本に興味があるという共通点だけで会場を訪れる人が実在することを確かめる。コンサート会場の客席のような高揚感であり、一期一会でもあります。ぜひ、ヨシタケシンスケ展を見に来た人を、こっそり見てください」

■ヨシタケシンスケ 
1973年、神奈川県生まれ。絵本作家として2013年に「りんごかもしれない」(ブロンズ新社)でデビュー。イラストレーターなどとしても活躍する。最新作は「メメンとモリ」(KADOKAWA)。

ヨシタケシンスケ展かもしれない 
7月16日まで。開場時間は午前9時半~午後6時。入場料は一般1300円、中高生1000円、小学生600円、未就学児無料。西日本新聞イベントサービス=092(711)5491。

=(6月10日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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