江口寿史展
EGUCHI in ASIA
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福岡アジア美術館
2018/08/01 |
2011年に渡米し、ロサンゼルスを拠点に活動するアニメ制作者古賀理恵さん=福岡県久留米市北野町出身=は、数々の作品でストーリーボードアーティストやディレクターを務めてきた。4月末にはデイタイム・エミー賞(昼間帯の番組が対象)で、アニメ「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」のオープニング映像のディレクターとしてノミネートされた。受賞は逃したが、迫力と洗練、愛らしさを併せ持つ作画と演出で、複数のスタジオからオファーが届く人気者だ。
アニメーションがどうやって作られているか。多くの人の手で、膨大な量の絵が描かれて…と漠然とは知っていても、具体的な役割分担は意外と知られていない。古賀さんが例を挙げて解説する。「嵐の海に浮かぶ船があったとしますね」。脚本にあるのは、場面設定とセリフの文章のみ。それらをどう画面に立ち上げるか。「激しい雨と大波を見せて、小さく船を入れるか。それとも船内の大揺れから見せていくのか」。こうしたカメラの動きを構成するのがディレクター、指示を基に絵コンテを描くのがストーリーボードアーティストという。「人によっていろいろな描き方、飽きさせない絵づくりがある。私はいつも、どうしたら集中して面白く見てもらえるか、観客視点で考える」
米国の制作現場は、低賃金長時間労働に支えられた日本の現場とは異なる。働きやすい環境をつくることに重きを置き、お気に入りのフィギュアがずらりと並んだ作業スペースがあり、時に社内パーティーも開かれる。ゆったりと語り合いながら、創造のアイデアが生まれる。
周囲の人からは、日本のアニメへの敬意を感じる。「アメリカではまだキッズアニメが強く、日本のように大人も楽しめるアクションを描ける人が少ない。物語も深みがあって面白いとみんなが言う」。日米の現場を知る者としては、複雑な心境だ。米国の「働きやすい環境」と日本の「高い技術」。双方の橋渡しができないかと考え始めた。
アニメが好きな子どもだったが、アニメにかかわるとは考えていなかったという。1990年代、CGの台頭がアニメ業界の入り口に立つ転機になった。
個人がパソコンで気軽にCG映像を作る時代が到来していた。「描いたものを自分でコントロールできて、ムービー出力まで一人でできる。生身の身体に左右されない、完全に自由な表現の世界」。短大を卒業後、専門学校で学んだCGにのめり込み、2001年には文化庁メディア芸術祭の関連展で入賞。アニメ制作の工程でデジタル化が進むに従い、現場に携わり始めた。福岡市のゲーム会社「サイバーコネクトツー」では「. hack」(ドットハック)シリーズの絵コンテや演出を担当した。
2度目の転機は2011年、留学目的の渡米だった。アートスクールでの自己紹介で絵コンテを見せたところ「これならすぐ働ける」とアニメ専門チャンネルを紹介された。
「知らない土地で、知らない人に会う旅が好き。海外でアニメはどう作られてる?と思い立った旅が、幸運にもここまで来た」
タートルズには渡米以来、最も長く携わった。12~17年制作のシリーズで、演出のみならず日本語監修も担った。タートルズは忍術で活躍する作品ゆえ、和風の要素がちりばめられている。「セリフの『待て』が『停止』になっていたり、変なタイミングでお辞儀したり。ちらほら気になって、自分からやりますと申し出ました」と笑う。
昨年、米国の永住権を取った。原点にある思いは一貫している。「小さい頃、藤子不二雄のアニメが好きだった。子どもから大人まで一緒に楽しめるものを作りたい」。7月からディズニースタジオで「ベイマックス ザ・シリーズ」の制作に参加している。心優しきロボットと仲間たちが、世界の人々を魅了する。(大矢和世)=7月30日西日本新聞朝刊に掲載=
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