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アートフェアへの初めての挑戦/WHITESPACE ONE 齋藤一樹氏に聞く【インタビュー】

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西山 健太郎
2018/09/06
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国内外から37のギャラリーが集結する現代アートの展覧会「アートフェアアジア福岡(ART FAIR ASIA FUKUOKA)2018」が9月8日(土)、9日(日)の2日間、ホテルオークラ福岡にて開催されます。
今回、このアートフェアに初参加する福岡のギャラリー「WHITESPACE ONE」のディレクター・齋藤一樹さんにお話を伺います。

 

――齋藤さんがこちらのギャラリーでディレクターを務めるようになってどれくらいですか?

齋藤 2年半くらいになります。2016年の2月に版画家・そだきよしの個展を企画し、以来、20本近く九州内外のアーティストの個展を企画しています。この「WHITESPACE ONE」での展覧会の企画・運営がメインですが、そのほかにもお声かけをいただき、佐賀県武雄市でのクリエーターが温泉街に滞在して展覧会を行う「TAKEO MABOROSHI TERMINAL」や福岡市東区大岳でのアーティストが元保養所の施設に1ヶ月滞在して展覧会を行う「UMINAKA TAIYOSO AIR」といったプロジェクトのディレクションなどを今まで手がけてきました。

――プロフィールを拝見すると、これまでにいろいろなお仕事を経験されているんですね。

齋藤 大学を卒業してはじめての仕事は、ユニバーサルスタジオジャパンの園内で行われるパフォーマンスやキャラクターショーを制作・運営するチームでの仕事でした。そのあと東京に戻り、広告系のイベント会社で記者発表会や東京モーターショーのブース出店の企画運営に携わったこともありました。また、劇団の一員として制作や役者の付き人をしていた時期もあります。当時は演劇にハマっていて、自分が芝居やイベントを構成するチームの一員であることにやりがいを感じていました。とはいえ、私自身とても飽きやすい性格で、20代の頃はほぼ1年ごとに職を転々としていましたね。10年前に縁があり福岡に移住してきました。5年ほどサラリーマンもしていましたが、現在はアートに関わる仕事に就きました。過去の色々な経験の積み重ねのおかげで、やっと地に足が付いてきたのかなと思います(笑)

WHITE SPACE ONE 外観写真

――大学ではどのような分野を専攻されていたのですか?

齋藤 私が在籍していた多摩美術大学の芸術学科は、プロデューサーや学芸員(キュレーター)を輩出している学科です。美術大学ですがデッサンなどの実技試験がない学科なのです。幼少期に父がよく映画館に連れて行ってくれたので、小さいころから映画が好きで、映画・映像制作に関わる仕事をしたいという野望を持って同学科を志望しました。入学してわかるのですが、周りの学科を含め大学全体に “才能のかたまり” みたいなアーティストがゴロゴロいるわけです。個人としての能力や才能の限界を否が応にも感じさせられ、それから「一個人のプレイヤーではなくチームで成し遂げる仕事」「エンターテイメント性がある仕事」に興味が移っていきました。現代美術やアートマーケット、展覧会という言葉も、大学に入って初めて知りました。

――そこから現在のアートディレクターのお仕事につながってくるのですね。

齋藤 私が在籍していた多摩美術大学芸術学科の海老塚耕一先生のゼミのカリキュラムの一環である、学生が中心となり企画・構成・運営する現代美術の展覧会「TAMA VIVANT」に携わったことが一つの転機になりました。当時開通したばかりの東急東横線みなとみらい駅の構内で美術展を企画。ゼミのメンバーでチーム編成を行って、作家選定、作家との交渉、作品考察のカタログ化、広報などを行いました。横浜市の職員の方にサポートしてもらいながら、東急との協議を重ねたうえで実現したものです。いろいろな制約はありましたが充実した展覧会にすることができたと思います。始発から終電までの作品監視のため、近くにウィークリーマンション借りたのもいい思い出になっています。

――その構想はどこから生まれたのですか?

齋藤 私が大学3年生のとき、親友のお父さんが退職金を使ってニューヨークでギャラリーをオープンしました。それに伴って、1か月くらい同地に滞在しました。「9.11」の同時多発テロの余韻がまだ残る2003年のことです。ギャラリーが集まるエリアの雑居ビルの佇まい、その中に足を踏み入れた時の全く想像できない空間の使い方、ニューヨークの街はすごく刺激的でした。特に一番印象に残ったのが、パブリックアートがある街の風景でした。ポートオーソリティ・バスターミナルの駅の券売機の近くで見たジョージ・シーガルの「The Commuters」という作品。さっき行った美術館にあった作品が、そこには無造作にポンと置かれていました。日常と非日常が同居している空間、そのイメージが強く残っていたのが大きいと思います。

過去の展覧会の様子(2016年儀間朝龍の展示風景)

――アートフェアアジア福岡は今回で4回目を迎えますが、「WHITESPACE ONE」は前回、前々回は “関連企画” という形での参加でした。今回、アートフェア本体に出展参加しようと思われたきっかけを教えていただけますか?

齋藤 昨年と一昨年は、アートフェアアジア福岡の会期中、この「WHITESPACE ONE」で儀間朝龍と宮下大輔の個展を開催しました。私自身、アーティストが作品を発表する場、そしてお客様が作品に触れていただく場として、ギャラリーが最も適していると考えていて、ギャラリーでの展示にこだわっていました。その一方で、アートフェアアジア福岡の会場はホテルの客室であり、とても制約が多い印象でした。過去二回はアートフェアアジア福岡の実行委員の皆様にも協力頂き、アートフェアの来場者の皆様に告知していただいたり、ギャラリーツアーを企画したりしたのですが、特に集客の面では、企画当初に想像していたような手応えを得られませんでした。

――そこで、今回の出展ギャラリーとして手を挙げることを決断されたのですね。

齋藤 考え方も少しずつ変わっていき、アートフェアは作品を紹介する場としてだけでなく、「アートの方を向いている人との出会いの場」でもあると思うようになったのです。なにせプレビュー1日と一般公開2日の計3日間で2500人ものコレクターやアートファンが訪れるのですから、展覧会とはまた異なった位置付けで、アーティストと一緒に作っていければと思っています。その中で、自身や作家が抱いている制約を、少しでもクリアできるような努力をできればと思います。また、数多くのギャラリーから応募があった中から、「WHITESPACE ONE」を選考していただきましたので、少しでも福岡でのアートフェアの盛り上がりに貢献できたらと思います。

――今回は国内外から37のギャラリーが出展します。昨年、アートフェアに初出展した作家さんに感想を聞いたところ、「嬉しさよりも怖さの方が強い。これだけたくさんの作家さんの中に自分の作品があって、かなりプレッシャーを感じます」とお話されていたのが印象的でした。齋藤さんご自身にプレッシャーや緊張はありませんか?

齋藤 おっしゃるとおり、アートフェアはある意味、残酷な場所だと思います。売れているギャラリー、売れていないギャラリーが、展示作品に添えられた値札に印がついているかどうかで一目でわかるわけですから。それがすべてとは思いませんが、少なくともその時・その場所における市場性というものはわかります。私自身もアートフェアで得たものを、アーティストと一緒に、今後の “戦略” の糧にしていきたいと思います。

――今回のアートフェアで紹介する作家さんや「WHITESPACE ONE」ルームの見どころを教えてください。

齋藤 そだきよし(石版画家/福岡)、儀間朝龍(現代美術家/沖縄)、田中千智(画家/福岡)、 宮下大輔(現代美術家/広島)、福嶋さくら(画家/熊本)、しまうちみか(現代美術家/熊本)の6名が参加します。「WHITESPACE ONE」が重視するのは「同時代の作家であること」です。今回の6名はいずれもWHITE SPACE ONEで個展を行ったことがありますので、過去に作品を見てもらったこともあるかもしれませんし、初めて作品を見てもらうことになるかもしれません。展覧会以降も連絡を取り合って近況確認はしていましたが、今回はこういった形で福岡のアートフェアに出展するので、ぜひ協力して欲しいと出品をお願いしました。他方面での展覧会で忙しい中、新作も準備してもらっているので、とても楽しみです。また、展示空間の構成についてですが、福岡在住のボーデ・フランクさんのお力を借りて、ホテルの室内を少しギャラリーのような設えができたらなと準備しています。

そだきよし /「FUKUOKA」

 

儀間朝龍 /「AIR JORDAN 1」

 

 

田中千智/「待ち合わせ」

 

宮下大輔/「20180630(001-003)」

 

福嶋さくら/「opportunism」

 

しまうちみか /柔らかなオブジェ series 3

――今後の取り組みについて教えていただけますか?

齋藤 引き続き「アーティストをサポート」していきます。アーティスト支援の最たるは、言うまでもなく作家の作品を購入することです。自分もそうしてきました。それで気持ちが満たされること、作品に囲まれる暮らしの中で、変わったことがあるのは事実です。ただそれ以外の支援の方法にも目を向けて、支援する側のそれぞれの価値観で、アーティストを支援するという事は何だろうかということを提案していければと思います。その人にとっては、作品がそこにある暮らしがハッピーなのかもしれないし、ある人にとっては不特定多数の作品を見に行くことが大事なのかもしれない。ある会社にとってはエントランスに大きな美術彫刻を置くことが大事、ある会社にとってはその作家の活動に共感を持って、支援することが価値なのかもしれない。それぞれの場面にあったオーダーメイドできるような企画者/ギャラリストであり続けたいです。支援という言葉がよくないのかもしれませんね、共犯の関係ですね(笑)。現代美術、アートの分野でそうした好循環の「仕組みづくり」に取り組んでいきたいと思っています。また、インターネットを介してアートに触れる動きが広がっているような気がしますが、やはり展覧会に足を運んでもらうことが大事だと思っています。ギャラリーという空間の中で作品を⾒てもらうこと、感じてもらうことは、かけがえのない体験だと思っています。 その場の雰囲気とか空気感とかも含めて展覧会だと思いますので。ぜひ、多くの市民の皆さんがギャラリーに気軽に足を運ぶ環境・仕組みを作っていけたら、またそれにつながる活動を続けていけたらと思っています。

――本日はありがとうございました。アートフェアでの「WHITESPACE ONE」の展示・演出を楽しみにしています。

アートフェアと同時開催でグループショーを開催します。
ホテルの会場に飾ることができなかった大きいサイズの作品を、夜の時間帯だけ、赤坂のギャラリーで展示しています。
ギャラリー奥のバーも営業していますので、アートフェアと両方をお楽しみください。 

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