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菊畑茂久馬さん追悼連載⑩「一流の画商たちの物語」【2007年コラムより】

2020/07/24 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 ARTNEでは、2020年5月21日に他界された福岡市の画家、菊畑茂久馬さんを追悼し、過去、菊畑さんが西日本新聞で執筆した書評や本についてのコラムを連載します。

 

【第10回】「美術商の百年・東京美術倶楽部百年史」​ 流の画家たちの物語

 時々、本棚から取り出して、どこでもかまわず開いて読む本がある。厚さ八㌢、千六百㌻もある豪華本だ。体重計に乗せたら四㌔もあった。「美術商の百年・東京美術倶楽部百年史」。この本を編集した親しい友人からの贈りものである。

 中身を一口で言うと、国宝、重文をはじめとする天下の名品を、誰がどうやって手に入れ、誰にいくらで売ったか、わが国の美術界を裏で支える一流の画商たちの百年にわたる歴史の物語である。また室町時代にさかのぼる美術品商取引の起源から述べた歴史編もあって興味が尽きない。

 かの有名な「平治物語絵巻」を、フェノロサが手に入れる時のシーン。売り手が五百円と言うと、フェノロサはポン!と千円出して、誰にも言うなと口止めするくだりなど、下手な小説より面白い。

 絵は画家から離れると、人生と同じ道を辿(たど)る。いつまでも大切にされて幸せな絵もあれば、粗末にされて不幸の坂を転がっていく絵もある。人生の栄枯盛衰に翻弄(ほんろう)されて、さまざまな運命を辿っていく。だから二度と手元に戻らぬ絵と別れる時は、いつもつらい。(画家・菊畑茂久馬)

 

▼きくはた・もくま 画家。1935年、長崎市生まれ。57年-62年、前衛美術家集団「九州派」に参加。主要作品に「奴隷系図」「ルーレット」「天動説」の各シリーズ。97年に西日本文化賞、2004年に円空賞をそれぞれ受賞。「絵かきが語る近代美術」など著作も多い。2020年5月に他界。

=2007年12月2日西日本新聞朝刊に掲載=

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