江口寿史展
EGUCHI in ASIA
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福岡アジア美術館
山出淳也 2021/02/09 |
始まってしまった!
いよいよこの日がやってきた。
2005年8月6日、BEPPU PROJECT最初のイベント開催日だ。
指輪ホテルという劇団による演劇公演だった。主宰者である羊屋白玉さんとは、その5年前にニューヨークで会った。彼女が作る作品は以前から知っていた。ある日、誰にも伝わらないことを悟った時の満たされない感情。僕にはそんなふうに感じる作品だった。
イベントはまだ20代前半の数人が担当した。演劇どころかイベント開催の経験もほとんどない素人ばかり。それでも毎晩のようにファミレスに集まり議論を重ねた。何からはじめていいのか、正解がなにかわからない。だけど本番は刻一刻と迫る。
会場は別府市唯一の映画館。使われてない3階のスペースを借りた。「もうこんなにお客が入ることもなくなってね」と館長から教えてもらった。ポスターが届いた。汗だくになりながら、通り沿いの店など一軒一軒にお願いして貼ってもらうが、たくさん残っている。メンバーにチケットを割り振り、必死で売り歩いた。それでも目標にはまだ遠い。
公演前日、羊屋さんをはじめ関係者10人程度が別府入りした。役者が町を巡る様子を撮影して演出の一部として取り入れる。案の定、編集は公演直前までかかった。本番前に車を飛ばし会場に着いた。通りの至るところにポスターが貼られていて驚いた。学生スタッフらが最後まであきらめず頑張ってくれていた。
本番前の通し稽古を皆で見た。胸がいっぱいになり泣き出す者もいた。「本当に実現したんですね」。震える声で、そんなことを伝えてくれた。開場前、3階のバルコニーから外を見た。長蛇の列だった。200枚のチケットは完売した。観客は、はじめて見るだろう不思議な世界に引き込まれているようだった。
今振り返ると、綱渡りの日々に冷や汗が出る。知らないからこそ、できることもあるのだなと思う。たまに「あの時のエネルギーは今も枯れてないか?」と自問する。あの日の夜の打ち上げの最中、記念撮影をした。皆本当にいい笑顔だった。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)
=(11月27日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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