日中文化交流協定締結40周年記念
特別展「三国志」
2019/10/01(火) 〜 2020/01/05(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
2019/11/30 |
来年1月5日(日)まで、福岡県太宰府市で開催中の特別展「三国志」。小説や漫画、ゲームなどにもなった「三国志」の世界は、時代を超えて多くの人に親しまれてきた。立命館アジア太平洋大(APU、大分県別府市)学長で、ライフネット生命創業者の出口治明さんもファンの一人。歴史好きで知られ、歴史関係の著作も多い出口さんに三国志の魅力、展覧会の見どころなどを聞いた。
展示品「人面文瓦(じんめんもんがわら)」は、何ともかわいらしい表情に見える。呉(ご)の時代の南京に分布していた瓦だという。技術的に似たものがベトナムで見つかっている。この展示品自体が、海と交易を重視した呉の姿を今に伝えているように思う。
中国の習近平国家主席が提唱する「一帯一路」構想は、中央アジア、欧州へと続く陸上ルートと、東南アジア、中東、欧州へ向かう海上ルートからなる。それは現代の話だが、古代の中国では基本的な発想は陸上ルートに向いていた。ただ、呉を建国した孫権(そんけん)は違った。おそらく「海の中国」を最初に意識した皇帝ではないだろうか。
孫権は若くしてリーダーになった。当時の南方には「越」と呼ばれる勢力がいて、彼らを討伐している。それまでの中国は中原(黄河流域の平原地帯)といわれる長安、洛陽辺りが中心だった。諸葛孔明(しょかつこうめい)の北伐も中原を狙ったものだった。
しかし、孫権は今の南京を中心にした江南地域(長江の南)を中核に自立を考えた。曹操が握った中原(華北)の北側には公孫氏がおり、孫権は海上ルートを使って魏を越えて公孫氏と交流している。「海の中国」と「江南」を意識した2点において孫権は非常におもしろい人物だった。
曹操を何度も打ち破るなど武将としても評価できる。曹操のような天才で、器が大きいわけでもない。中国全体を統一しようという気概はなかったかもしれない。ただ、孫権のような能力とバランス感覚があれば会社の経営はできる。今の世の中にも通じるところがあると思ってしまう。
長江流域は昔から豊かな地域だった。歴史的には三国時代の後、南北朝時代につながっていく。それは呉の孫権から始まっている。 =11月20日西日本新聞朝刊に掲載=
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