開館15周年記念特集展示 奈良県立橿原考古学研究所附属博物館蔵品巡回特別展
しきしまの大和へ -奈良大発掘-
2020/07/28(火) 〜 2020/12/20(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
2020/11/10 |
奈良の発掘調査を続ける奈良県立橿原考古学研究所(橿考研)と付属博物館の収蔵品を並べた特別展が、福岡県太宰府市の九州国立博物館(九博)で開かれている。古代国家の中心地だった大和から出土した考古遺物約300点が並ぶ。
会場入り口付近には特徴ある土偶が展示されている。縄文晩期の観音寺本馬遺跡からの出土品で、顔は大胆にデフォルメされている。口と耳のみが穴で表現され、愛らしい。齋部麻矢・九博主任研究員によると、ふくらはぎに筋肉のような盛り上がりがあり、男性がモチーフらしい。確かに全体にふくよかさはない。男性の土偶は珍しいという。
この遺跡ではクリの栽培跡も見つかり、人々の定住化がうかがえる。さらに展示は、農耕文化の定着、集落の形成、王権の誕生へと時代を追っていく。
邪馬台国の有力候補地とされる纒向(まきむく)遺跡からの出土品の甕(かめ)7点は、吉備や尾張などさまざまな地域から運び込まれている。一方、桜井茶臼山古墳(4世紀)出土の「石釧(いしくしろ)」は、九州でよく見つかる貝製腕輪をモデルに、希少な石で作られた装身具。権威の象徴として周辺の首長に配布したとみられる。これらからは、徐々に中央集権へ向かう時代の流れが見えてくる。
渡来工人集団を抱えた集落遺跡の出土品からはヤマト王権による活発な海外交流が見て取れる。天皇が中心となる飛鳥時代には、「国家」としての海外交流が広がっていく。伝来した仏教の影響を受けたハス、唐草模様の軒瓦(藤原宮跡出土)は、大宰府でも似たような文様の瓦が出土しており、中央のデザインが全国に広がったようだ。
大和には、国内外から文化や技術が集まるようになり、その影響は地方に波及した。王権の誕生前夜から古代国家形成までの出土品を、「外との交流」という視点で再確認するのも面白い。(小川祥平)
=(11月6日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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