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追悼人間国宝中島宏展によせて 陶芸家 中村 清吾さん ぎりぎりの線で挑戦―連載【コラム】

2019/04/29 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

日本伝統工芸展に出品し始めたころから中島宏先生にお世話になりました。先生は祖父(陶芸家の中村清六さん)を「おんちゃん」と呼んでいた縁もあり、私のことを知人づてに聞き、「がんばりよるってのお」と声をかけてくださいました。

陶芸家 中村清吾さん


ときどき作品を見ていただくと「ちょっとバランスのわるか」などとアドバイスをいただきました。その時はすぐに分からなくても、しばらくすると「ああ、そういうことなのか」と納得できる。先生は「焦らんでよかたい」「がんばっていかんば」と背中を押してくれました。
白磁の妙味を造形性、青白磁は陰影とするなら、青磁は玉のような深みを追う世界。完成像を予測するのが難しく、同じ釉薬(ゆうやく)でも厚みや窯の中の位置、湿度など少しの条件の差で全く違う物ができます。釉薬の流れ方や収縮率をある程度は予想しながらも、未知の色と姿を求め、ぎりぎりの線で挑戦する世界です。
いつも同じ物が出るように作る安定的な物作りだと工業的になる。先生は「芯ば持って、自分がいいと思うものを見つけていくしかなかたい」と、工芸の姿勢を語っていました。

≪作品紹介≫青瓷線彫文平鉢(2005年、東京国立近代美術館蔵)。
淡い釉薬と包み込むような口作り、ろくろ目を生かした線彫文のコントラストが美しい。
第52回日本伝統工芸展のNHK会長賞受賞作。


先生の作品も変わり続けました。以前は「釉は厚ければ厚いほどよか」と言っていたのが、後に「厚ければよかわけじゃない」と。同じ青でもマグネシウム系、カルシウム系など釉薬の成分で多彩な色味とマット釉の表情を生み出しました。
陶芸は決してかっこいいばかりの仕事ではありません。土で汚れ、粉は舞う。昔はもっと大変な環境での物作りでした。先生は先人の陶工にも敬意を持ち、地に足がついたところから物を考えていた。そして、いつまでも少年のような純粋さで自分の青を追い続けておられました。 (談、聞き手は平原奈央子)

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